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HOME 企業向けストレスチェック コラム 労働安全衛生法改正によるストレスチェック実施義務と労働契約法による安全配慮義務について

労働安全衛生法改正によるストレスチェック実施義務と労働契約法による安全配慮義務について

2022.09.12  更新:2022.10.21 労働安全衛生法改正によるストレスチェック実施義務と労働契約法による安全配慮義務について

労働安全衛生法は1972年に労働基準法から分離する形で制定されました。

出典: https://www.aemk.or.jp/roudou_anzen.html

労働安全衛生法は「職場における労働者の安全と健康を確保」するとともに、「快適な職場環境を形成する」目的で制定された法律です。 その条文のほとんどの主語は「事業者」であり、事業者の義務及び努力義務を示しています。

労働安全衛生法は「職場における労働者の安全と健康を確保」するとともに、「快適な職場環境を形成する」目的で制定された法律です。 その条文のほとんどの主語は「事業者」であり、事業者の義務及び努力義務を示しています。

労働衛生の3管理とは

労働衛生の3管理とは、

  • 作業環境管理
  • 作業管理
  • 健康管理

の3つです。

作業環境管理

作業管理とは、作業の内容、作業の方法、作業時間をてきせつなものにして、有害な物質やエネルギーが労働者に及ぼす影響を少なくするものです。 作業手順や作業方法の見直し、保護具の適正な使用を推進します。

健康管理

健康診断およびその結果に基づく事後措置、健康測定及びその結果に基づく指導、ストレスチェック制度の実施などを含みます。

労働安全衛生法の改正によるストレスチェックのポイントは

2014年の労働安全衛生法の改正により、事業者に対してストレスチェック 制度の実施が義務化されました。

ストレスチェック制度はメンタルヘルス指針に示される幅広い活動の一部として位置づけられるものであり、それを実施しただけでは職場のメンタルヘルス対策として十分とは言えません。 ストレスチェック制度の要点は、以下のように整理できます。

  1. メンタルヘルス不調の1次予防 (未然防止) を第一義的な目的とする。ストレスチェック制度は、特定の精神障害を有する労働者を発見し、治療の奨を行うためのものではなく、ストレスが高まっている労働者に対して、メンタルヘルス不調 (後述)をきたさぬよう支援を行うことを主要なねらいとしている
  2. ストレスチェック(条文では「心理的な負担の程度を把握する検査」と表現されている)と, それによって高ストレス者と判断された者に対する面接 指導およびその事後措置からなる。ストレスチェック (質問紙) によって, 高ストレス者を選定し、該当者のうち申し出た者に対して、医師による面接指導を行う。 面接指導の結果必要 と判断された場合には、就業面の配慮などの措置を実施する。
  3. 個人結果は、本人の了承がない限り事業者には知らされない
    健康診断と異なり、個人別結果は本人にのみ通知され、事業者は本人の了承がない限りその内容を知ることができない。職場ごとの集団分析の結果は知ることができる。
  4. 健康診断とは別枠で実施しなければならない
    健康診断と同時期に行うことは可能であるが、混同されてはならない。 果通知についても, 別々のものとする必要がある。
  5. 労働者の受検は強要されない
    対象となっている労働者 (=健康診断の対象者) 全員が受検することが望ましいとされるが,ストレスチェックを受けるか否かは、労働者個人の意思に委ねられる。 事業者が受検の勧奨をすることはできる。
  6. ストレスチェックの結果, 必要と判断された者に事業者負担で医師による面接指導が行われる
    本人が申し出た場合に実施され、事業者が強要はできない。また、面接指導の結果、必要に応じて就業面の配慮などの事後措置が行われる必要がある。
  7. ストレスチェックの結果は、 労働者のセルフケアおよび職場環境の改善に生かされる必要がある
    職場単位の集団分析の結果をもとに職場環境改善を行うことも、事業者の努力義務とされた。ただし、受検者が必ずしも労働者全員でないことから、 職場環境改善を行うにあたっては,ストレスチェックの受検率を高めるとともに、職場環境に関する他の情報を併せて評価すべきである。
  8. 実施項目は, 「職業性ストレス簡易調査票」が望ましい
    職業性ストレス簡易調査票は、日本で開発された質問票であり、簡単な57項目の質問で構成されている。また、このうちの12項目の結果を「仕事のストレス判定図」を利用して職場単位で集団分析することにより、当該職場における仕事のストレスの程度を、全国平均と比較した健康リスクとして数値で表現することが可能である。
    「職業性ストレス簡易調査票」には、23項目の短縮版も用意されており それを使用してもよい。 その他の質問票を用いてもよいが、少なくとも、 「仕事のストレス要因」 「心身のストレス反応」 「周囲のサポート」の3 領域を評価できる内容でなければならない。
  9. ストレスチェックの実施者は、医師、保健師、および一定の研修を受けた看護師、 精神保健福祉土、公認心理師、歯科医師とする
    実施者とは、企画および結果の評価に関与する者を指す。
  10. 労働者数50人未満の事業場では、当面義務化されない (努力義務である) 。 小規模事業場については実施の義務化が見送られたが、可能な事業場では実施が検討されるべきである。

事業者の安全配慮義務と労働契約法

事業者(使用者)は雇用する労働者に対して、安全配慮義務を負っています。

安全配慮義務とは、雇用する労働者が仕事を遂行する中で生命や安全が脅かされることがないかどうかを確認し (危険予知義務), その可能性が高い場合には、未然にその対策を講じなければならない (結果回避義務) ことを言います。

安全配慮義務は、もともと労働契約に付随する事業者にとっての信義則上の債務の一部とされ、注意義務とともに損害賠償をめぐる民事訴訟で争点となることが多かったが、2008年に施行となった労働契約法の第5条に「使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」という文言で盛り込まれました。

この 「生命、身体等の安全」 には、心身の健康が含まれています。

労働安全衛生法とストレスチェックについてよくある質問

労働安全衛生法とストレスチェックについてよくある質問について、よくある質問をまとめました。

Q.ストレスチェックの義務根拠は?

A, 労働安全衛生法第66条の10です。

ストレスチェックとは労働安全衛生法第66条の10に基づき、2015年12月から特定の事業場で実施を義務付けられているストレスに関する検査のこと。 50人以上の労働者を抱える事業場では、すべての労働者に対して年1回の実施が義務付けられています。

Q.ストレスチェックの実施根拠は?

A, 労働安全衛生法第66条の10です。

ストレスチェック制度(労働安全衛生法第66条の10)の実施義務は、常時50人以上の労働者を使用する事業場に対し、医師、保健師等による毎年1回、定期的に心理的な負担の程度を把握するための検査[ストレスチェック]を実施することが事業者に義務付けられました。

Q.ストレスチェックの実施義務は?

A. 労働安全衛生法第66条の10です。

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師、 保健師その他の厚生労働省令で定める者による心理的な負担の程度を把握するための検査(ストレスチェック)を行わなければならない。

Q.ストレスチェックの法律改正は?

A. 「労働安全衛生」の改正により、平成27年12月以降、50人以上の労働者がいる事業所でストレスチェック制度の実施が義務づけられました。

Q.ストレスチェックの義務違反は?

A. ストレスチェック制度に導入義務・労基署への実施報告義務があり、未実施または、未報告の場合には最大50万円の罰則金が課されることがあるので、注意が必要です。 また、ストレスチェックが未実施だと、安全配慮義務に違反の可能性があります。

安全配慮義務とは、労働契約法で次のように既定されています。

労働契約法5条
「労働者は雇用契約に基づき、使用者からの指示命令に従って働く場所、時間、機器などの環境を決める企業は、労働者の生命、身体はもちろん心身の健康を保ちながら働けるよう職場環境に十分な配慮が必要」

安全配慮義務を違反した場合、会社は民法415条1項に定める「債務不履行」による損害賠償が請求されることがあります。

民法415条1項(債務不履行による損害賠償)
「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。
ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。」

以上のとおり、損害賠償請求の規定が定められているので注意が必要です。

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